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2013.02/26(Tue)

原武史「滝山コミューン一九七四」を読む

 1月中旬に大阪の旭屋書店なんばCITY店に寄って、鉄道関係書籍のコーナーを廻っていた時に見つけたのが、「レッドアローとスターハウス」という本。

レッドアローとスターハウス: もうひとつの戦後思想史レッドアローとスターハウス: もうひとつの戦後思想史
(2012/09/28)
原 武史

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 著者は原武史氏。正直言って彼の鉄道関連の主張には首を傾げるものが多いのだけど、団地を中心とした都市社会学関連では結構評判が良かったような記憶も有ったし、なにより表紙の装幀がなかなかポップでいい感じ。自宅へ戻ってからネットで注文してみた。

 その前に、「レッドアローとスターハウス」を書店でチラ読みしていて、これを読む前に抑えておかないといかんでしょ? と思って、地元の書店にて購入したのが「滝山コミューン一九七四」。以下、本書に関する感想をつらつらと。

滝山コミューン一九七四 (講談社文庫)滝山コミューン一九七四 (講談社文庫)
(2010/06/15)
原 武史

商品詳細を見る

 原氏は1962年東京都生まれで、幼少時代はひばりヶ丘から久米川、滝山と日本住宅公団の団地を移り住み、小学校は滝山団地最寄りの久留米第七小学校(以下、七小と略す)に通学した。本書は当時の七小で行われていた集団主義教育の実態について、原氏自身の体験と当時の関係者への聞き取りも交えてまとめたものである。学級内の児童を幾つかの班に分けて、意図的に「ボロ班」なる(現代風に言えば)負け組を作り出すことで相互競争を煽る集団競争システムと、それに批判的な児童(原氏もその内に入るのだが)に対して行われる「追求」という名の査問などが非常にセンセーショナルで、発表当時はかなり話題になったようだ。

 班単位での学習や課外活動などは自分も経験したことがあるが、七小の班活動で特徴的なのが、目標の設定や目標到達の確認を児童自身が行うという点であろう。後者については、それ専従の班が設けられ、班ごとの結果が序列される。そして一番劣っていた班が「ボロ班」として指摘されるというわけ。学級活動における役割分担も、各班の立候補においてなされるが、複数班で要望がダブった場合は劣っていると思える班を児童が投票・排除することで担当する班を決定していく。一見すると児童による民主的な管理運営に思えるものの、その評価方法は減点主義なのがポイントだ。
 こんな学級活動を行えば、低く評価された児童に強烈な劣等感を植えつけてしまうのではと思うのだが、劣等感を覚えるからこそ班活動に精力的に取り組み、その結果として児童の能力が伸びると、当時の集団主義教育の提唱者は理論付けしていた。

 この一見民主的、その実は絶え間なき相互競争・相互監視的な集団主義教育を実践する学級と、それを支援する保護者などの地域共同体を、原氏は「滝山コミューン」と呼んでいる。原氏自身は「滝山コミューン」学級には直接所属していなかったものの、高学年になるにつれて学校内で影響力を増す「滝山コミューン」に巻き込まれていく。
 そのクライマックスとなる林間学校の描写は圧倒的だ。夕食後のキャンドルファイヤーで、当時の原氏は「滝山コミューン」が内包する集団主義の残酷さを見抜いていた。そして、それが容易に全体主義へ転化しうるものであることも。
 やがて同級生からの「追求」まで受けた原氏は、真剣に「滝山コミューン」から離脱しようと足掻いていく。第一志望の私立中学入試に落ちた時には、衝撃のあまり自宅で泣き崩れたという。子供ながらも必死だったのだろう。

 何ともおぞましい「滝山コミューン」が成立し得たのには、一体どういう背景があったのだろうか。原氏は巨大住宅団地特有の、住民の均質性を指摘している。確かに、当時の団地は入居条件(間取りや所得制限など)がほぼ均一で、しかも短期間に大量に入居募集することから、入居者は総じて核家族しかも中産階級で民主主義的意識が高かった。そこの小学校にある教員が持ち込んだのが、民主主義的な集団主義教育だったのだ。

 「滝山コミューン」の物語は、原氏が七小を卒業した時点で「崩壊」というかたちで終了する。自分はこのまとめ方に不満を感じている。一学年まで広がった「滝山コミューン」は、なぜ七小の卒業生大半が進学する中学校を舞台にして拡散していかなかったのか、その点の追究が弱いと思うのだ。
 おそらく、中途で「滝山コミューン」から離れてしまった原氏は、「滝山コミューン」のその後についての評価を躊躇う意識が有ったのかもしれない。ただし、暗に仄めかしている記述は存在している。七小卒業から約10年後に開かれた同窓会で、集まった参加者たちの殆どが当時の細かな記憶を喪失していたのだった。
 「滝山コミューン」を中学校に広げていこうとすれば、周囲に相当な軋轢が生まれただろう。記憶の喪失が、その軋轢を黒歴史として封印しているのか、それとも本当に小学校卒業で「滝山コミューン」が自然消滅してしまって単に忘れているだけなのか。書き方としては後者のように思われる。

 展開されている出来事が重いので、全体的に暗い印象のある本書だが、その中で当時の原氏が救いを感じていたシーンにはホッとさせられる。学習塾に通っていた時に利用していた国鉄中央線(当時)の描写は、同じ趣味を持つものとして共感を覚えるものがあるけど、特に推したいのはサイクリングの箇所だ。6年生になった原氏の担任教員は時々児童を集めてサイクリングを企画していた。もちろん児童の自由参加で、原氏は自転車に乗りつつ「滝山コミューン」の外の世界に触れることになる。集団競争状態にあった「滝山コミューン」学級の課外活動とは対照的で、人の成長において小学校教員の占めるものは非常に大きいと感じたものだ。

 さて、「滝山コミューン」でググってみると数多くのBlogサイトがヒットする。先に述べたように、当時の反響の大きさを物語っているのだが、それらが実に興味深い。
 本の感想と併せて、小学生時代に教師から受けた仕打ちを語っているBlog筆者がいたり、七小で集団主義教育を進めていた教員を「全共闘世代」と書かれていたのにむかついたのか「全共闘と一括りにすんじゃねーよ、そいつは代々木系だろ」と批判していた元全共闘(だろうな、多分w)がいたり。あ、その主張自体は自分も頷けるところで、集団主義教育には代々木、すなわち日本共産党的な臭いを感じるのだが。
 日教組に所属する現役教員のBlogもあった。当時集団主義教育を実践している教員グループは日教組の中でも最左派に属していて、大多数の教員の支持を得るには至ってなかったそうだ。ちなみに共産党系が日教組から分離するのは「滝山コミューン」以降のことで、だから本書を読んで「これだから日教組は云々…」と単純に非難するのは止めたほうが良いw
 いろいろな意見を見て欲しいので、リンクを張るのは避ける(決して面倒くさいからじゃないよw)。ただ、本書の内容についてある教育学者が批判発言をしていたのを紹介しているBlogについては、特にここで一部引用で触れておきたい。

 原武史『滝山コミューン一九七四』(講談社、2007年)を一気に読んだ。昨日、参加した学習院大学で開かれた戦後教育実践史研究会に参加したのだが、その席で臼井嘉一(福島大学)氏がやや興奮気味に『滝山コミューン』のように戦後教育を総括されてはたまらないといった発言をされた。

教育学者よ、滝山コミューンに眉をひそめるな。@きけ、わだゆうこのこえ
http://wadayu.solstico.net/index.php?e=104

 本書について教育界から批判的なリアクションがあったというのは初見だ。気になって「臼井嘉一 滝山コミューン」でググってみると、こんな書籍を発見した。

学生と教師のための現代教育課程論とカリキュラム研究@成文堂
http://www.seibundoh.co.jp/pub/search/024964.html

 内容紹介を見ると、「第8章 集団主義教育におけるカリキュラム研究」の中に「2 集団主義教育の実践―原武史『滝山コミューン 1974』より」という項目がある。恐らくここで本書と、そこで書かれた集団主義教育についての評価がなされているはずだ。ちなみにこの本はAmazonでも販売されている。

学生と教師のための現代教育課程論とカリキュラム研究学生と教師のための現代教育課程論とカリキュラム研究
(2012/10)
臼井 嘉一、金井 香里 他

商品詳細を見る

 読んでみたいけど、これだけのために殆ど自分の興味外の教育専門書を買うのもどうもね~、どっかの図書館でコピーでもと考えてたら、自分の近所では国立国会図書館関西館にしか存在しなかった… コピーしにそこへ行くくらいなら買ったほうが安いってw
 ま、これについては今後の課題ということで。

 長くなったので、「レッドアローとスターハウス」の感想はまた次回にでも。



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